はじめに
2023年に向けて、中国経済の将来は不確実性に満ちているが、霧の中からでもいくつかの明確な傾向を見出すことができる。本レポートでは、中国市場の4つの確実性に焦点を当て、来年の成長について分析と予測を行う。
確実性一:インフラ投資が依然として経済をけん引する主要な原動力
消費、投資、輸出は一国の経済成長を支える3つの原動力である。ただ、失業率が引き続き高いことに加え、景気の先行きが不透明であることから、来年の国民消費の力強い回復は望めないと考えている。また、輸出は2020年のGDP成長率への寄与度が82%に達したが、大部分の海外経済主体が通常の生産活動をほぼ再開し、中国の輸出に対する需要が低下した。さらに、2021年以降、不動産開発投資の成長率が鈍化し、2022年1~10月の投資累計額は前年比8.8%減となった。
不動産も経済を支えきれなくなると、インフラ整備が投資ひいては経済全体の牽引役となる。同時に、インフラ投資は持続成長を維持する基礎条件も備えている。たとえば、都市・農村間、地域間の不均等な発展が交通や水利施設など従来のインフラの拡張需要を生み出す。また、中国経済全体におけるデジタル経済の割合が高まっている。デジタル経済の発展基盤は、5Gネットワークやデータセンターなどの新型インフラにある。政策的な支援により、新型インフラへの投資拡大は今後数年間続くと予想される。
確実性二:省エネ・炭素削減の継続的な推進
第20回党大会報告では、「カーボンピークアウトとカーボンニュートラルを積極的かつ着実に推進し、中国のエネルギー資源の特徴に基づき、…石炭のクリーンで効率的な使用を強化し、新型エネルギーシステムの計画・建設を加速させる」ことが必要であると提案した。このことから、省エネと炭素削減は依然として今後の発展の最優先課題の一つであることがわかる。
確実性三:製造業の設備更新の加速
前述の通り、2023年は外需が弱含みとなり、内需の押し上げ効果は不透明である。そのため、製造業では生産能力の拡大は望めないが、企業にとっては時間をかけて設備を向上させる良いチャンスがあるかもしれない。「供給側改革」と「カーボンピークアウト・カーボンニュートラル」目標により、高汚染・エネルギー多消費型業界における設備更新の実施が大きく促進された。設備更新のための資金支援政策が次々と実施されている。中でも2022年9月28日に中国人民銀行が発表した設備更新・改造のための特別借換融資は注目すべきものである。
確実性四:外交における主導権の拡大
近年、米国政府より中国に対する抑制は強化されている。今後、米国から産業チェーンのデカップリングや技術封鎖政策にさらに直面すると予想されるため、中国自身の貿易陣営の強化が急務である。
また、欧州のエネルギー危機は現地の製造業に大きなプレッシャーを与える中、中国がエネルギーの面で優位に立つため、ドイツの製造業から受注の一部を奪い、来年の製造業の全体的な外需低下の悪影響をある程度緩和することが期待される。
今後、中国は経済貿易協力のネットワークを維持し、さらに強化するために、外交や対外貿易においてより積極的な姿勢をとる可能性があると考えている。
Speeda China 首席アナリスト 米岡哲志
sh-analyst@uzabase.com