

公的機構との役割分担の意味もあり、民営機構によって建設・運営される施設は、中高所得層の高齢者向けの高級マンション・介護施設が中心となっています。運営方式は独立出資・運営が多いものの、政府部門と提携する官民パートナーシップ(Public–Private Partnership: P.P.P)や、現地の不動産デベロッパーや介護サービス専門企業との共同運営もあります。
施設の種類では、単なる高級マンションや介護施設よりも「継続介護付きリタイアメント・コミュニティー(Continuing Care Retirement Community: CCRC)」と呼ばれる、年齢ごとのニーズに応じて住居、生活サービス、介護、看護、医療サービスなどを総合的に提供するタイプが多くみられます。こうした施設を成り立たせるには、土地取得から施設棟の建築まで、一貫したコミットメントが必要になるため、経営リスクはその分高くなると言えます。それでも民営機構がCCRCを手掛けるのは、政府が提唱する高齢者向け養老サービス体制「在宅が基本」「社区(コミュニティー)が拠り所」「介護機関はあくまで補完機能」「医療と介護の一体化」といった方針に合致しやすいため。そして、ビジネス的な観点からも、◇高齢者の長期的な居住により高い入居率を安定的に維持できる◇土地資産価値の維持と向上が図られる――などのメリットが期待できるためです。
当然ながら日本企業も、こうした巨大市場での事業展開に注目しています。中国政府も、未曽有の高齢化への対策の一環として、日本政府との協議を進めています。国家発展改革委員会と経済産業省は2018年、19年に「日中介護サービス協力フォーラム」を共同開催しました。19年の第2回開催時には、日中の政府関係者、専門家、介護サービス事業者、福祉用具メーカーなど約370名が参加し、高齢化分野に関するシンポジウム、商談会に加え、同時期に隣接会場で開催されているHCR(国際福祉機器展)の視察が行われました(経産省サイトより)。
現在、中国の養老市場で活躍している日本企業は約10社ありますが、独資で事業を展開する企業はごく一部に限られ、現地企業と合弁会社を設立するケースが一般的となっています。日本企業は養老施設の運営やサービスについてノウハウ・技術を持っているものの、中国における施設用地の確保や現地固有のニーズの把握は難しいため、当面はこのような合弁形式での事業展開が主流となる見込みです。
中国養老業界における日本企業の展開事例(一部)
Speeda China アナリストチーム(執筆・王思文)
監修・米岡哲志
sh-analyst@uzabase.com
本レポートは中国版Speedaトップページに載せられている「中国の養老施設業界と日系企業の参入について」のレポートをまとめたものとなっています。
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