英BPの統計によると、中国は2020年に石炭消費量が世界シェア54%、石炭生産量が同51%、石炭輸入量が同21%と、いずれも世界一となりました。中国の電源別発電量を見ると、火力発電(石炭、ガス、石油による)は総発電量の67%を占めます。そのうち95%は石炭火力発電が占めており、同国の発電の6割超が石炭に依存していることが分かります。
このような全体像の中で、直近の電力不足の状況を見てみましょう。世界に先駆けてコロナ禍を脱した中国では、今年に入り工業生産が拡大し、これと歩調を合わせて1~8月の電力消費量が前年同期比13%増となりました。こうした中、国家発展改革委員会は8月、2015年10月に提出された「双控(エネルギー消費の総量と低効率の削減)」の省区別達成度を確定。同月17日の記者会見で、目標未達の9省・区に対して「一級警告」を発令しました。
「一級警告」に該当する省・区では、「両高」と呼ばれる「高エネルギー消費」「高汚染」のプロジェクトの審査が一時中止となることが決まりました。この「両高」規制に該当する業界として電力(石炭火力発電)は筆頭に挙げられます。中国の電力情報サイト「北極星電力網」によると、火力発電機の省・区別の容量は2020年12月時点で、1位が山東省(シェア8.9%)、2位が江蘇省(同8.1%)、3位が広東省(同7.7%)、7位が(同5.1%)が新疆ウイグル自治区でした。
江蘇省、広東省は「双控」で「一級警告」、新疆ウイグル自治区は「二級警告」にそれぞれ該当し、石炭火力発電を抑制しなければならない省・区です。これら3省区の石炭火力発電容量は中国全体の21%を占める、稼働縮小が電力供給に与える影響は大きかったとみられます。
出所:国家発展委員会通知公告
注1:チベット自治区は一次的なデータ不足により警告レベルのリストから除外。
注2:赤は「一級警告(状況が非常に厳しい)」、青は「二級警告(状況が比較的厳しい)」、灰色は「三級警告(進捗がおおむね順調)」
こうしたジレンマの中で、9月後半には米アップルや米テスラへの部品納入業者が、停電により江蘇省内の工場を一時停止したことなどが国内外のメディアで報じられ、サプライチェーンの混乱に対する危機感が高まりました。
しかしその後の中国政府の対応は素早く、石炭の増産に向けて、さまざまな措置を講じています。これをまとめると、大きく5つの動きがあります。
本レポートは中国版Speedaトップページに載せられている「データで分析、中国電力不足は続くのか?」のレポートをまとめたものとなっています。
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