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他社事例に学ぶ、日系企業の中国事業展開

2022年01月17日

はじめに

日系企業の中国における事業展開は「第5次・第6次5カ年計画(1976-85年)」の時代に相当する1970年代末から1980年代後半にかけて、改革開放の波とともに拡大した。中国への進出日系企業数は、4回に及ぶ「対中投資ブーム」を経て2万3094社(注1)に達し、国別でトップとなっている。しかし、2010年の外資優遇税制撤廃、中国の人件費上昇や成長率低下といったさまざまな要因を受け、日本の対中投資は2012年をピークに減少傾向が続いている。 日本の対外・対中直接投資額(FDI) 出所:国連貿易開発会議(UNCTAD)、商務部の資料を基にUzabase作成 こうした中、2020年の日本の対中投資額は前年比21.1%減の1兆1046億円にまで減少した。国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、2020年の海外直接投資(FDI)は世界全体で前年比42%減となる中、中国向けは同15%増となり、米国を抜いて初の国別世界一となった。では、日本はいま、中国への投資意欲を本当に失ってしまったのだろうか。
2020年は世界的に新型コロナウイルスが猛威を振るった。各国の経済は大きな打撃を受けたが、中国は世界の主要国の中で唯一、経済のプラス成長を維持した。第4次対中投資ブーム以降、日系企業の間では、中国以外の拠点を確保する「チャイナプラスワン」が脚光を浴びた。しかし実際には、これだけの経済規模と市場規模、高い技術レベルと産業集積が進んだ生産拠点を持ち、日本からのアクセスが容易な国は存在しないことを思い知らされた。  

日本の対中投資ブーム

出所:岩崎薫里「転換期にある日本の対中直接投資」環太平洋ビジネス情報 RIM 2014 Vol.14 No.55を参考   近年の世界貿易環境の激変やサプライチェーンの再編などを受け、日本ではいま、中国市場への期待感がふたたび大きな高まりをみせている。
日本と中国の貿易を金額ベースで見ると、2020年はコロナの影響で前年比0.2%減の約3402億ドルとなった。日本の貿易額が全体で1割減と落ち込む中、日中貿易は相対的に小幅な減少にとどまった。そして、日本の貿易に占める中国の比率は過去最高となった。
米国が近年、保護貿易主義の動きを強めハイテク産業の技術保護に厳格に取り組むようになったことで、日本から中国への輸出については、集積回路(IC)や半導体などで構成される「電気機器およびその部分品」、機械類、精密機器などで、前年比2桁増を記録する品目も多数みられた。

日中貿易総額の推移

出所:JETRO「2020年の日中貿易、日本の貿易に占める対中比率は過去最高に」(2021年6月15日)を参考
日本から中国へのFDIが総体としては減り続ける中で、しかし日系企業の中には、売上全体の半分以上を中国でたたき出す企業も存在する。中国で積極的に事業展開する日本企業で構成される株価指数「日経中国関連株50」(注2)の構成銘柄のうち、SPEEDAの有価証券報告書データから中国での売上比率が分かる企業は25社あった。
売上高の中国比率が最大となったのは電子部品大手のTDKで、その比率は近年、安定して50%以上を維持している。これに続くのが同業の村田製作所だ。同社の財務データでは地域分類を「中華圏」の売上高としていることから、中国以外の地域も含まれるもようだが、売上高の「中華圏」比率は同じく近年、50%超となっている。
 

主要日系企業の中国売上比率

出所:有価証券報告書に基づく財務データより   以下では、中国での売上比率が大きい日系企業のうち、同比率が拡大傾向の5社について、最新の事業展開動向を、5カ年計画の重点産業に沿ってまとめることで、これから中国市場に本気で取り組む企業への示唆としたい。

主要日系企業: 中国売上比率のトレンド

出所:有価証券報告書に基づく財務データより (注1)2012年末時点、中国貿易外経統計年鑑2013。同年鑑では2014年版以降は国別企業数が発表されていない。中国日本商会「中国経済と日本企業2021年白書」を参考にした。 (注2)日本経済新聞社は2021年6月25日付けで同株価指数の算出を終了した。ここでは最終時点の構成銘柄を参考にした。

主要日系企業の事業展開事例

        SPEEDA China 首席アナリスト 米岡哲志 sh-analyst@uzabase.com

enhanced_encryption 本レポートは中国版SPEEDAトップページに載せられている「5カ年計画のキーワードから読み解く中国重点産業【後編】」のレポートをまとめたものとなっています。

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