多くの企業で、業務にAIを取り入れたリサーチが広がっています。市場動向や競合ニュースの収集・整理でも、日々の情報収集の効率が上がったと感じている方は多いのではないでしょうか。
しかし、こうしたAIによるリサーチだけでは、事業戦略や投資判断にそのまま使えるとは限りません。もう一歩のリサーチが必要になります。
本記事では、AIによって加速した情報収集を、中国事業における「次の一手」を判断できる精度にどう近づけるか。この問いに向き合っていきます。
リソースが限られる中で、日々の情報収集にAIを活用することは、変化の速い中国事業において合理的な選択です。現地のニュースの要約や市場動向の初期整理、複数言語にまたがる一次資料の翻訳。これらはAIが得意とする領域です。工数のかかる作業でも、AIを使えば圧倒的な速さでアウトプットを出せます。
情報収集を効率化できれば、その分の時間を、より精度の高い分析や戦略立案に充てられます。AIは「知る」を加速させる、リサーチの入り口を担うツールとして身近な存在となりました。
【ケース:定期的な市場動向のアップデート場面でAIを活用】
中国拠点の責任者として、中国市場の最新動向を、本社へ定期的に報告しています。その報告資料の作成に、AIを活用しています。
AIは「情報の収集・整理・要約」を特に得意としています。日々の情報収集にAIを取り入れることで、リサーチや資料作成にかかる工数を大幅に削減できるだけではなく、本社への情報共有の品質とスピードも向上することができるのです。

地域戦略の策定や投資判断といった重い意思決定の場面では、AIによる情報収集だけでは、情報の精度や信頼性に課題が残ります。
一つは、情報源の限界です。AIは既存の情報を再構成することに長けていますが、公開情報だけでは見えない産業施策の背景にある行政の意図や、まだ言語化されていない現場の一次情報のような未公表の動きまでは追いきれません。
もう一つは、情報の精度の限界です。AIは公開情報をもとに回答を作ります。そのため、どの情報を根拠にしているかが明示されないことがあります。出典が不明確なまま、それらしく整った回答が返ってくる。表面的には正確に見えても、実際には誤っている情報が混ざっていることも珍しくありません。ビジネスの意思決定に直結する場面で、こうした回答を鵜呑みにするのはリスクを伴います。
例えば、先ほどの【定期的な市場動向のアップデートを行うケース】では、マクロ経済、業界動向、規制・政策変更、競合企業の動向、M&A・投資動向といったテーマで、日々の情報収集が必要でした。AIによって誰もが情報を集められる時代になりました。しかし、こうした場面でビジネスの意思決定に使える水準まで情報の精度を上げるには、AIだけに頼らない、もう一段のリサーチが必要になります。
特に中国事業では、先行きへの不透明感が強まる中、拡大よりも慎重な見極めが求められる場面が増えています。精度を欠いた情報に基づく判断は、投資対効果の観点からも許容しづらくなっているのです。
では、精度の高い情報を得るためには、何が必要になるのでしょうか。先ほどのケースを例に、参照すべき情報源を考えてみましょう。
こうした情報は、対象地域や業界が複数あり、発表のタイミングも情報の粒度も異なります。どの情報源を、どの地域について、どの頻度で確認するか。これを一人で継続的に管理するのは、容易ではありません。
ここからは、精度の高い情報を得るための具体的な方法を、3つのステップで紹介します。
AIの強みは、情報を素早く整理できる「速さ」と「幅」にあります。一方、業界・企業データを体系的に蓄積したデータ基盤の強みは、その情報の「深さ」と「確からしさ」です。リサーチの初期段階、つまり一次情報の探索や要約はAIに任せ、裏付けや深掘りが必要な段階ではデータ基盤を使う。この使い分けが、精度向上への近道になります。
2つのツールを組み合わせたハイブリッド体制を組むことで、情報の確度はもう一段引き上げられます。
データ基盤を活用することで、出典・情報ソースの選定と管理という、本来利用者が負うべき責任を軽減できます。思必达は中国当局から金融情報サービスの提供許可を受けて運営しており、規制環境の変化が速い中国市場でも、一定の品質と安心感のある情報基盤として活用できます。
地域・業界に精通したエキスパートの知見や、アナリストなどの専門家のインサイトを加えることで、AI生成だけでは実現できないレベルまで、情報の質そのものを高めることができます。
実際にある日系コンサルティングファームでは、生成AIとデータ基盤をそれぞれ、インプットとプロセスで役割を分けて活用しているそうです。

【Speeda活用事例より】
弊社では、複数社の財務データを信頼できるデータ基盤で収集しています。それを生成AIに入れ込み、「この軸で比較してほしい」「図にしてほしい」と加工を任せる使い方です。「元データはデータ基盤、加工は生成AI」と、インプットとプロセスで役割を分ける発想です。
AIに「この軸で比較して」と頼んでも、本当にそのデータを正しく取ってきたのかは、最後まで分かりません。結局、自分で確認する二度手間が発生しがちです。一方、信頼できるデータ基盤の情報であれば「間違っていない」という前提で加工に進められます。出典への不安が解消される分、データを個別に拾いに行っていた時間を空けられます。その時間を、一次情報の取得や、現地・顧客との議論にあてられるようになります。
AIとデータ基盤でリサーチの役割を分担し、使い分けることで、効率よく意思決定のためのリサーチができるのです。
リサーチを基に初期仮説を立てた後は、検証を重ねる段階に入ります。「仮説→検証」を繰り返す仮説検証のプロセスを経て、意思決定に耐える確度まで高めていきます。
現地の規制変更の背景や、公開情報には出てこない業界の実情を、その市場を知る「現地の声」から取り入れていくことも、仮説をブラッシュアップする有効な方法です。
こうした個別性の高い現地の声から取り入れることができる情報は、公開情報の検索だけで把握することは困難です。こうした一次情報を取得できることは、AIによる二次情報の整理とは異なる価値を仮説検証に与えることができます。

また、もう一つ見落とされがちな観点があります。AIは利用するたびに、利用者のデータを学習していきます。社内データだけを学習したAIに頼ってリサーチを続けると、議論が内向きになりがちです。
だからこそ、社外の信頼できるデータ基盤や専門家ネットワークなど、AIだけに頼らない情報収集が重要になるのです。
生成AIの普及によって、情報収集と整理そのものは、誰にとっても簡単になりました。だからこそ、そこから先が問われる段階に入っています。どこまで精度の高い情報で意思決定に進められるか、という点です。
AIによる情報収集を否定するのではありません。AIでは埋まらない「判断のための一次情報」をどう確保するか。この問いに向き合うことが、中国事業の戦略の質を左右します。
先行きへの不透明感が強まる今だからこそ、拡大か縮小かにかかわらず、精度の高い情報に基づいた意思決定がこれまで以上に重要になっています。
思必达は、こうしたAI時代の意思決定を支えるデータ基盤です。中国国内のマクロ経済から、企業データ、業界動向までを網羅的に提供しています。中国事業の戦略を描く経営企画の皆さまにとって、AIによる情報収集を、意思決定につながる精度まで引き上げるパートナーになれると考えています。
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