組織体制と生産力強化を終え、販売力強化のフェーズへ
貴社事業の概要についてお聞かせください。
沖田幸康氏(以下、沖田氏):
明治グループは1916年に前身となる企業設立以来、100年余りにわたって時代に応じて社会が抱える栄養や健康に関する課題を解決する商品を提供してきました。中期経営計画2026ビジョンの重点方針として「海外市場での成長基盤の確立」を掲げ、食品セグメントの海外売上高比率を10%以上にする目標を立てています。中国、東南アジア、米国をグローバル重点エリアとし、その中でも中国市場はそのポテンシャルからひときわ重要な市場として、経営資源を集中させて取り組んでいます。
中国国内ではこれまで以上にスピード感のある意思決定を目指し、近年中国内の法人を機能集約・統合し体制強化してきました。その中で社員が主体的に情報収集し、業務上の意思決定に活かせるよう導入されたツールのひとつがSpeedaですね。
私の職務としては、明治チャイナのアイスクリーム事業の責任者として市場部と販売部を統括しています。アイスクリームの商品企画、開発、販売、宣伝、物流といった、生産/製造を除くマーケティング分野全般が管轄範囲になります。市場部と販売部を合わせて約60名が在籍していますが、私以外は全員ローカルスタッフです。これらメンバーで力を合わせ、中国市場に明治ブランドを浸透させお客さまに喜んでいただくために日々奮闘しています。
アイスクリーム事業として、これまで中国では広州で生産を行い、華南エリアを中心に中国全土で事業展開をしてきました。2024年には上海でアイスクリームの新生産ラインが始動、生産能力を従来の約2倍に増強しました。巨大な市場である中国の需要に対して応えられるような生産体制に投資をしてきて、これからは販売を強化するフェーズとなります。日本国内でトップシェアを獲得した商品カテゴリーを中心に展開するだけでなく事業部内に商品企画機能も持ち、売上拡大にコミットしています。
競合他社の財務分析データ源、市場情報の裏付けとして活用
Speedaの活用場面についてお聞かせください。
沖田氏:
事業戦略を作成するときのマクロ情報の収集、競合他社の分析、本社報告の資料作成時の業界ごとの情報収集と、一通り使っていますね。
日常の使用としては、やはり自身が担当する事業に関する日中の競合企業情報(特に財務データ)のチェックが多いです。業界が3C分析のフレームで整理されており、市場、競合、プレイヤー各社の事業規模などのデータが揃っている。更にベンチマークの会社をさらに掘り下げて、過去分の財務資料なんか見てP/Lの比較分析をすると、ここにチャンスがあるねとかないねとかいうのが分かるわけです。Speedaでは複数の企業分の財務データを並べてExcelに出力することもできるので便利ですよね。
企業情報を調べる機会は多いですね。競合としての乳製品事業の大手ローカル企業の財務状況もモニタリングしていますし、また、アイス関連企業は中国には数万社あるといわれるくらい非常に多くて、信用情報だけでなく競合他社との資本関係がないかなど、取引是非を判断するにも企業の外形情報を調べる必要が随時あります。情報の種類や粒度によっては確固としたデータ自体が存在せず、取引先複数社からの情報を掛け合わせて推察することもありますけどね。
データだけでなく、専属アナリストが分析・総括するレポートも必ずチェック
また、中国の消費者を理解してもらう為のまとまった情報として、Speedaのコマース分野のレポートは役立っています。消費者動向のレポートは必ずチェックするようにしていますね。また、ローカル幹部社員でSpeedaを使っているメンバーも市場動向への感度が上がり、ダブル11のような中国の商戦期の分析レポートは自発的にダウンロードして部内でシェアしてくれるようになりました。
速報のような断片的な情報であればニュースの方が早いですが、イベント全容を俯瞰したようなレポートが迅速にリリースされると嬉しいですよね。また、四半期毎に市場動向や政府情報等なんらかのレポートがあるので参考にしています。Speeda含め、情報サービスは用途に応じて使い分けるのが良いと考えています。
国外ならではの事象に対する認識ギャップは、客観的外部情報をうまく活用
中国市場や企業の情報量は日本企業情報よりも数段少ないため、本社向け経営会議資料など定期的な社内レポート作成時や事業戦略の背景を説明する際には、個社の財務データよりも業界レポートを活用させていただいています。第三者が客観的な視点でまとめているという点で社内における主張内容の説得力が増すので引用で使ったりね。銀行レポートなど他情報ソースとの併用をしていて、銀行さんのレポートは年一回などの頻度で日系企業が知りたい中国市場が綺麗にまとめられているので重宝する一方、Speedaはその分析のパーツとなるような情報が好きなときに好きなように調べられるツールとして活用しています。この、ツールとして取得できる情報の自由度が高いというのは、ユーザーの皆さんの活用の仕方に委ねられるというのはありますね。
日本であればPOSデータのような販売チャネル・ブランド単位での販売量データを取得し、精緻な数値の積み上げや変遷をベースに出来る分析や戦略立案が中国では出来ないのが辛いところです。中国市場の全体像は、我々が現場の近くで仕入れる断片的な情報をもとに大枠を仮説建てしてまずチャレンジし、その結果をもって軌道修正をするという繰り返しをするしかないですが、こういった大前提としての市場データ取得環境のギャップは本社からはなかなか理解されにくいです。なので、現場からの生の情報や類推をSpeedaレポートに記載された客観的な事実で補完をするというのはひとつの使い道ですね。
弊社は地域軸・事業軸の両軸で組織が動いていて「下沈市場」なんかは中国市場の特性のひとつとして数年前から本社に説明してきましたが、日本とは社会構造が違うのでなかなか理解が得られませんでした。一級都市、二級三級都市などもですが、こういった日本には存在しないからぱっとイメージがつきにくいような事象を私個人が説明するよりも、Speedaのアナリストなど第三者が綴った文章の権威をうまく使うことで「あ、本当にあるんだ」という反応を引き出せたりします。
在住歴長く中国語もご堪能な沖田さんにそのような活用をしていただけているとは、意外であるとともに光栄です。
ローカル幹部社員の情報感度が上がるきっかけにも
Speedaをご活用いただくことで得られる効果はいかがですか?
沖田氏:
ローカル幹部社員の意識変化については先ほど申し上げた通りですが、競合企業の事業規模や概要などを個人の曖昧な記憶で話すのではなく、先ずはSpeedaを含む情報源で確認してから話しに来てくれることが少しずつ増えてきたと思います。中国市場の分析ですから、中国人スタッフがメインで使っていけなければと思いますよね。一方、調べようとした中国中小企業がデータベースで検索できない場合やデータが非公開な場合もままあり、中国におけるファクトチェックの難しさを感じています。
ただ、よく分からないネットニュースなどでなく、Speedaのような事実ベースでの情報で裏付けをすることは継続して取り組んでいきたいですね。
また、今後販売強化にしっかり取り組んでいく必要があり、新規販売先の開拓などSpeedaの企業データベースをいかした活用ができるようにしたいと思っています。
目的を決めて使うことで、Speedaは強力なサポートツールに
最後に、Speeda導入を検討されている企業に向けて、アドバイスをお願いします。
沖田氏:
Speedaをはじめ、日本発・中国発問わずデジタルツールやサービスが豊富に選べる時代になりました。ただ、ツールはあくまでツールであり、機能があって情報があっても使用目的が不明確のまま導入すれば、活用できずに宝の持ち腐れになると思います。
なぜツールが必要なのか、ツールを使って何をしたいのか?つまり、HOW(どうやって)ではなくWHY(なぜ)から考えることが必要だと思っています。また、そうやって決めた目的を、最初はちょっと苦労すると思うのですが繰り返し使ってみて実現させることが大事ですよね。
ありがとうございました。
明治(中国)投資有限公司
www.meiji.com.cn-
特色
「健康にアイデアを」をスローガンに、meijiだから提供できる「食と健康価値」を通して、社会課題の解決に貢献し、さらなる成長を目指す明治グループ。明治グループの食品セグメント事業の海外売上比率は10%を目標としているが、その中でも大きな期待を背負っているのが中国市場である。
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業種
乳製品を中心とした食品メーカー
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部署・職種
アイスクリーム事業販売・マーケティング責任者
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主な利用シーン
中国事業の戦略立案の為の情報収集
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明治(中国)投資有限公司広州分公司
アイスクリーム事業部販売総監 兼 販売統括部部長
沖田 幸康さま